子どもと学ぶ世界の多様性

「きまり」ってどうしてあるの?~世界のルールから学ぶ多様性と平和~

Tags: きまり, ルール, 多様性教育, 平和教育, 小学校

はじめに:「きまり」が教えてくれること

子どもたちの日常生活には、「きまり」や「ルール」が数多く存在します。学校の教室での過ごし方、友達との遊びのルール、家庭での食事のルールなど、様々な場面で私たちは何らかの「きまり」の中で生きています。これらの身近な「きまり」は、子どもたちが社会の仕組みや、他者と共に生きる上での大切なことを学ぶ最初の入り口となります。

この記事では、身近な「きまり」から出発し、世界には様々な「ルール」があることを知ることを通して、多様性や平和について子どもたちとどのように学んでいくことができるのかを探ります。異なるルールを持つ人々が互いを理解し、尊重し合いながら共に生きるためのヒントを、教育現場での実践的なアイデアと共にご提案します。

テーマの解説:なぜ「きまり」や「ルール」が必要なのか

「きまり」や「ルール」は、人々が集まって生活する上で、安全や秩序を保ち、互いの権利を尊重するために必要不可欠なものです。もし「きまり」が全くなかったら、人々は好きなように行動し、ぶつかり合いや混乱が生まれる可能性があります。

しかし、「きまり」や「ルール」は、地域や文化、社会によって驚くほど多様です。挨拶の仕方、食事のマナー、時間の感覚、集団の中での個人の振る舞いなど、それぞれの社会が大切にしている価値観や歴史的背景によって、異なるルールが生まれます。

例えば、日本では靴を脱いで家に入るのが一般的ですが、他の国では靴のまま家に入るのが普通であったりします。これはどちらが「正しい」わけではなく、それぞれの文化の中で育まれた異なる習慣、すなわち「ルール」です。

「子どもの視点から」の深掘り:きまりへの素朴な気持ち

子どもたちは、「きまり」に対して様々な感情を抱くことがあります。「きまり」があることで安心して過ごせると感じる一方で、時に「どうしてこんなきまりがあるんだろう?」「ちょっと不自由に感じるな」「友達と違うきまりがあって戸惑うな」といった素朴な疑問や不満を持つこともあるでしょう。

友達とゲームをする際に、その場限りの独自のルールを自分たちで作ったり、状況に合わせてルールを少し変えたりといった経験は、子どもたちにとって「ルールは固定されたものではなく、自分たちで考え、作り上げることもできる」という発見に繋がります。また、異なるルールを持つ友達との間で、どうすれば一緒に楽しく遊べるかを話し合った経験は、互いの違いを乗り越えて共生するための大切な学びとなります。

大人の視点では複雑な社会システムや法律として捉えられがちな「ルール」も、子どもの視点からは、身近な人間関係や、自分を取り巻く世界との関わりの中で生まれる、生きた、そして時に変化するものとして感じ取られます。このような子どもの素朴な疑問や経験に寄り添うことが、多様なルールが存在する世界の理解へと繋がる第一歩となります。

教育現場での活用アイデア:子どもたちと「きまり」を考える

「きまり」や「ルール」をテーマにした学習活動は、子どもたちの多様な視点を引き出し、他者理解や共生意識を育む機会となります。以下に具体的な活用アイデアをご提案します。

問いかけ例:

アクティビティ案:

  1. 「きまりがあるとき/ないとき」の想像:
    • もし学校に「きまり」がなかったら? もし公園に「きまり」がなかったら? といった設定で、子どもたちに自由に想像してもらい、絵や文章、発表会形式で表現する。安全や自由に焦点を当てる。
  2. 世界の「おもしろいルール」調べ学習:
    • 世界の様々な文化や国にある、日本とは違うユニークな「ルール」や習慣をグループごとに調べ、発表する活動。食文化、挨拶、交通ルールなど、子どもたちが興味を持ちやすいテーマを選ぶ。多様なルールがあることの発見に繋げる。
  3. 「新しい遊びのルール作り」ワークショップ:
    • 簡単な遊び(例:鬼ごっこ、じゃんけんなど)を一つ取り上げ、子どもたちが自分たちでルールをアレンジしたり、新しいルールを追加したりするワークショップを行う。ルールの必要性、公平性、面白さなどを考える機会とする。
  4. 「異なるルールを持つ人との共同作業」ロールプレイング:
    • ある目標を達成するために、異なる「ルール」や価値観(例:「とにかく早く終わらせる」「みんなの意見を聞いてから決める」「順番をしっかり守る」など)を持つグループ同士が協力する必要がある、という設定でロールプレイングを行う。意見の対立や調整の過程を体験し、多様な価値観の中で合意形成を図る難しさや大切さを学ぶ。

これらの活動を通して、「きまり」は単に守るべきものではなく、人々が共に生きるために考えられた知恵であり、多様な形があり得ること、そして異なるルールを持つ人々との関わり方について、子どもたちは主体的に学んでいくことができるでしょう。

まとめ:「きまり」から広がる平和な世界

私たちの身近にある「きまり」は、世界の多様なルールを知るための小さな窓です。世界には、文化、歴史、環境など、様々な背景から生まれた多様なルールが存在します。これらの違いを知り、「どうしてそうなんだろう?」と考えることは、世界の多様性を理解する上で非常に重要です。

そして、異なるルールを持つ人々と出会ったときに、すぐに否定するのではなく、まずは「違い」を受け止め、互いを理解しようと努める姿勢が、平和な社会を築く上での基盤となります。子どもたちが身近な「きまり」から学び始め、世界の多様なルールへの想像力を広げていくことは、将来、複雑な国際社会において、他者と尊重し合い、共に生きるための大切な力を育むことに繋がるでしょう。

「きまり」について考えることは、自分たちの社会をより良くするためにどうすれば良いか、そして世界の多様な人々との関わりの中でどのように平和を築いていくかを考える、豊かな学びの機会となるのです。