子どもたちの権利ってなんだろう？～世界の子どもたちの声から学ぶ多様性と平和～
子どもたちの権利から多様性と平和を考える
小学校の先生方が、子どもたちの多様性や平和への理解を深める授業を計画される際、世界の子どもたちの状況や、彼らが持つ「権利」について考えてみることは、非常に示唆に富む入り口となり得ます。この記事では、「子どもたちの権利」というテーマを通じて、子どもたちが世界には様々な境遇の子どもたちがいることを知り、すべての子どもが尊重され、安全に暮らせる平和な社会について考えるためのヒントを提供します。
「子どもの権利」に込められたメッセージ
「子どもの権利」とは、すべての子どもが、どこに生まれても、どんな状況にあっても持っている、人間としての基本的な権利のことです。これは、1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」によって定められています。この条約は、子どもたちが健やかに成長し、もっている力を十分に伸ばせるように、様々な権利を保障しています。
主なものとして、「生きる権利」（命が守られ、健康に育つこと）、「育つ権利」（教育を受け、遊ぶこと）、「守られる権利」（暴力や搾取から守られること）、「参加する権利」（自分に関係のあることについて自由に意見を言えること）などがあります。
しかし、残念ながら、世界にはこれらの権利が十分に守られていない子どもたちがたくさんいます。紛争や貧困のために学校に行けない子ども、十分な食事や医療を受けられない子ども、危険な労働を強いられている子どもなど、その状況は様々です。こうした世界の子どもたちの多様な現実を知ることは、自分たちの「当たり前」が世界中のすべての子どもたちの「当たり前」ではないことを理解する第一歩となります。そして、すべての子どもの権利が守られることこそが、多様な人々が共生し、平和に暮らせる世界の基盤であるという大切なメッセージを子どもたちに伝えることができます。
子どもの視点から見る「権利」と世界の現実
「権利」という言葉は、子どもたちには少し難しく聞こえるかもしれません。しかし、「自分にとって大切なこと」「こうだったら嬉しいな」「これは嫌だな」といった身近な感情や経験に置き換えることで、子どもたちは自分事として捉え始めることができます。
例えば、「毎日学校で友達と遊べること」「夜は家で安心して眠れること」「お腹がすいたらご飯が食べられること」など、自分たちの日常の中にある「当たり前」が、実は守られていることなのだと気づく機会になります。
その上で、世界には自分とは違う状況にいる子どもたちがいることを知ったとき、子どもたちはどのような感情を抱くでしょうか。自分との違いへの驚き、困難な状況にある子どもへの共感や悲しみ、あるいは、なぜそのような違いがあるのかという疑問を持つかもしれません。子どもたちの純粋な目には、不公平だと感じられる状況が映るでしょう。こうした子どもたちの素朴な感情や疑問こそが、多様な世界への関心や、すべての子どもたちが幸せに暮らせる世界を願う気持ちの出発点となります。大人の複雑な議論に踏み込むのではなく、「同じ子どもなのに、どうして？」という根源的な問いに向き合うことが重要です。
教育現場での活用アイデア
「子どもたちの権利」というテーマを小学校の授業で扱うことは、子どもたちの人権意識や国際理解、そして多様な人々との共生を目指す態度の育成につながります。以下に、具体的な活用アイデアを提案します。
- 導入の問いかけ:
- 「あなたが『これだけは大切にしたい！』と思うことは何ですか？」「学校で友達と遊ぶこと、家で本を読むこと、寝る時間…何かな？」
- 「世界には、あなたと同じくらいの年の子どもたちがたくさんいます。その子たちは、みんなあなたと同じような毎日を送っていると思いますか？」
- 「子どもの権利条約」を易しく紹介:
- 条約の４つの柱（生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利）を、具体的な子どもの生活場面と結びつけて、子どもにも分かる言葉で説明する。
- 権利を「まもられていること」として捉え直す。「あなたが毎日学校で勉強できるのは、『教育を受ける権利』がまもられているからだよ。」
- 世界の子どもたちの状況を知る:
- ユニセフなどの資料を活用し、様々な国や地域の、異なる状況にある子どもたちの写真や簡単なエピソードを紹介する。（例：学校に通えない女の子、栄養が足りない赤ちゃん、兵士として戦わされている少年など）
- それぞれの事例について、「この子が今、まもられていないかもしれない『権利』は何だろう？」と一緒に考える。
- 対話やグループワーク:
- 「もし、あなたが世界の子どもたちのために一つだけ願いを叶えられるなら、どんな願いを叶えたいですか？」
- 「クラスのみんなが、学校で楽しく安心して過ごすために、どんな『大切なことリスト』を作ったらいいかな？」（自分たちの身近な環境での権利やルールについて考える）
- 問いかけ例：
- 世界には、病気になってもお医者さんに見てもらえない子どもがいます。この子には、どんな「権利」が大切だと思いますか？
- 自分の意見を言いたいのに、言えない子どもがいます。この子には、どんな「権利」が大切だと思いますか？
- どうして、世界にはこのような状況の子どもたちがいるのでしょうか？みんなで考えてみましょう。
- 私たちが、世界の子どもたちの権利についてできることは、どんなことでしょうか？（知ること、伝えること、自分たちの身の回りで大切にすることなど）
- アクティビティ:
- 世界の子どもたちへの応援メッセージやイラストを作成し、教室に掲示する。
- 「私の大切なことリスト」や「理想の世界の絵」を作成する。
- 調べ学習：興味を持った国や地域の、特定の子どもの状況や文化について調べて発表する。
これらの活動を通じて、子どもたちは自分たちが守られていることへの感謝や、世界には多様な状況の子どもたちがいることを理解し、異なる環境で生きる他者への共感や想像力を育むことができます。
まとめ
「子どもたちの権利」というテーマは、子どもたちが自分自身を大切にすること、そして世界中のすべての子どもたちが尊厳を持って生きる権利があることを学ぶための重要な機会を提供します。世界の子どもたちの多様な現実を知り、そこに共通する「権利」という視点を持つことは、他者を尊重し、困難な状況にある人々に寄り添う心を育みます。
この学びは、単に知識を増やすだけでなく、子どもたちが自分たちの日常生活や、将来出会うであろう多様な人々とどのように関わっていくかを考える上で、確かな羅針盤となるでしょう。すべての子どもの権利が守られる、より公正で平和な世界の実現に向けて、子どもたちの視点から共に考える授業は、未来への希望を育む教育実践となるはずです。