子どもと学ぶ世界の多様性

色々な「家族」があるってどういうこと?~身近な多様性から学ぶ尊重~

Tags: 家族の多様性, 身近な多様性, 尊重, 共生, 小学校授業, 道徳教育

はじめに:子どもにとって一番身近な「多様性」

子どもたちにとって、最も身近で安心できる場所は「家族」である場合が多いでしょう。朝起きて夜眠るまで、食事を共にし、話をし、時には意見をぶつけ合う。そんな日常の中で、子どもたちは家族との関わりを通じて様々なことを学んでいきます。

しかし、「家族」の形は世界中に、そして日本国内にも、実に多様な形があります。お父さんとお母さんと子どもが一緒に暮らす家族もあれば、おじいさんやおばあさんと一緒に暮らす家族、お父さんまたはお母さんだけと暮らす家族、兄弟姉妹が多い家族、外国にルーツを持つ親がいる家族、親が同性の家族、血の繋がりのない人が家族として一緒に暮らす家族など、挙げればきりがありません。

この記事では、子どもたちの最も身近な世界である「家族」の多様性に焦点を当て、それをどのように子どもたちに伝え、多様性を認め合い、互いを尊重することの重要性を学ぶ機会とするかについて考えます。身近な「ちがい」を知り、それを受け入れる経験は、子どもたちがより広い世界の多様性や平和について学ぶための、確かな一歩となるでしょう。

「家族の多様性」が子どもたちの世界にどう映るか

大人は「家族には色々な形がある」ということを知識として理解していますが、子どもたちはどうでしょうか。自分の家族の形を「当たり前」だと思っている子どもにとって、友達の家族や物語に登場する家族が自分の家族と違うことに戸惑いを感じたり、疑問を持ったりすることがあります。

「どうして〇〇ちゃんの家にはお父さんがいないの?」「△△くんの家には子どもが5人もいるんだって!」「先生の家にはペットもいるの?」といった素朴な疑問や、「うちの家族はちょっと変わってるのかな…」という不安、「あの家の暮らし方がうらやましいな」といった様々な感情が生まれる可能性があります。

子どもにとっての「家族」は、必ずしも生物学的な親だけを指すわけではありません。一緒にご飯を食べる人、一緒に遊んでくれる人、困ったときに助けてくれる人、安心させてくれる人。血縁関係だけでなく、そうした「繋がり」や「絆」を感じる人が家族であると捉えることもできます。

家族の多様性について考えることは、「ふつうの家族とは何か?」という問いにも繋がります。しかし、「ふつう」という枠に当てはめようとすること自体が、多様性を否定することになりかねません。どんな形であれ、そこに暮らし、互いを思いやる人々がいれば、それは大切な「家族」なのです。子どもたちが、自分自身の家族を肯定し、同時に他の様々な家族の形にも肯定的なまなざしを向けられるように促すことが重要です。

教育現場での活用アイデア:身近なテーマから学びを深める

「家族」という子どもにとって身近で大切なテーマは、道徳や総合的な学習の時間、特別活動などで多様性や共生について考える上で、非常に有効な入り口となります。ここでは、授業で活用できる具体的なアイデアをいくつかご紹介します。

問いかけ例:子どもの考えや感情を引き出すために

子どもたちが自分自身の考えや、他者への共感を深めるための問いかけは、オープンクエスチョン形式で行うと良いでしょう。正解は一つではなく、多様な考えがあることを前提に進めます。

アクティビティ案:体験を通じて理解を深める

まとめ:身近な「ちがい」から世界の多様性へ

「家族」という最も身近な存在の多様性について学ぶことは、子どもたちが自分自身のルーツやアイデンティティを受け入れ、自信を持つことにも繋がります。同時に、自分とは違う家族の形があることを知り、それぞれの家族が持つ良さや大切にしていることを理解しようと努める経験は、他者を尊重する姿勢を育む上でかけがえのない土台となります。

身近な「ちがい」を知り、それを肯定的に捉える経験は、子どもたちの視野を広げ、より広い世界の多様性や、異なる文化、考え方を持つ人々との共生、そして平和な社会の実現へと繋がる学びとなります。

この記事でご紹介したアイデアが、先生方が子どもたちと共に多様性や平和について考え、学びを深めるための一助となれば幸いです。子どもたちが、どんな家族で生まれても、どんな環境で育っても、自分らしく安心して生きていける社会を、共に創っていくことができるよう、教育の現場から多様な価値観を育んでいきましょう。