世界には「はたらく」がいっぱい!~仕事から学ぶ多様性と社会とのつながり~
導入
子どもたちは、将来の夢として様々な職業を思い描きます。しかし、「働く」ということの意味や、世の中にどれだけ多様な仕事が存在するのか、そしてそれらの仕事がどのように社会とつながっているのかについて、深く考える機会は少ないかもしれません。
この記事では、「世界中の働くこと」という切り口から、子どもたちが多様性や平和、そして社会の一員としての自身の役割について学ぶためのヒントを提供します。働くことの多様性を知ることは、文化や背景の違いを理解し、互いを尊重する心を育むことにつながります。また、様々な仕事が助け合って社会が成り立っていることを知ることで、共生や平和の重要性をより実感できるようになるでしょう。この記事を通じて、小学校教諭の皆様が、子どもたちの世界観を広げ、将来への希望を育むための授業づくりに役立てられるような情報を提供できれば幸いです。
テーマ「働くことの多様性」の解説
「働くこと」と一口に言っても、その内容は地域、文化、歴史、技術の進歩などによって非常に多様です。都市部のオフィスワークだけでなく、農村部での農業、漁村部での漁業、伝統工芸、IT技術、福祉、教育、芸術など、数え切れないほどの仕事が存在します。
世界の視点で見れば、その多様性はさらに広がります。砂漠でラクダと暮らす人、ジャングルで伝統的な生活を守る人、大都市で最先端の技術開発を行う人、紛争地域で人道支援を行う人。それぞれの仕事は、その土地の自然環境や文化、社会構造と深く結びついています。
これらの多様な仕事は、どれか一つが欠けても社会は成り立ちません。食料を作る人、家を建てる人、病気を治す人、教育を行う人、ルールを守る人、そしてそれらを支える様々な仕事。すべての仕事は相互に依存し合い、社会全体を動かしています。そして、性別や年齢、国籍、障がいの有無などに関わらず、様々な人々がそれぞれの能力や立場で社会に貢献できる多様な働き方が存在します。この事実を知ることは、一人ひとりの違いを認め合い、共に生きる共生社会の基盤を理解する上で非常に重要です。
「子どもの視点から」の深掘り
子どもにとって「働くこと」は、まず身近な大人の姿として認識されます。「お父さんやお母さんは、どんな仕事をしているんだろう?」「なぜ働くんだろう?」といった素朴な疑問から始まります。テレビや絵本で見たかっこいい職業、将来なりたいと思っている職業への憧れも強いでしょう。
多様な仕事があることを知ったとき、子どもたちは驚きや新鮮な発見を感じるかもしれません。「こんな仕事があるんだ!」「大変そうだけど、面白そう!」「どうしてその仕事をしているんだろう?」といった興味が湧いてくるでしょう。
また、「働くこと」を通じて、自分の「好き」や「得意」が将来どのように生かせるのか、社会とどう関われるのかを考えるきっかけにもなります。絵を描くのが好きな子がデザイナーやイラストレーターに興味を持ったり、動物が好きな子が獣医や飼育員を目指したりするように、自己理解と社会とのつながりを結びつける大切な学びです。
さらに、「体が不自由な人でもできる仕事」「日本語が話せない人が活躍できる仕事」など、多様な人々が社会の中で役割を果たしていることを知ることは、インクルーシブな社会に対する子どもたちの自然な共感や理解を育むことにつながります。働く人それぞれの違いを受け入れ、互いを尊重する気持ちは、やがて多様な人々が共に生きる社会への理解へと繋がっていくのです。
教育現場での活用アイデア
「働くことの多様性」をテーマに、子どもたちの多様性や平和への理解を深める授業を組み立てることができます。以下に具体的なアイデアを提案します。
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問いかけ例:
- 皆さんが知っている仕事はどんなものがありますか?(身近な仕事からスタート)
- おうちの人やおじいさん、おばあさんはどんな仕事をしていますか? その仕事は誰かの役に立っていますか?
- もし、皆さんが知っている仕事がなくなってしまったら、世の中はどうなると思いますか? (例えば、農家の人、医者、先生、警察官など)
- 世界には、日本にはないどんな仕事があると思いますか? なぜその仕事が必要なのでしょう?
- 体の使い方がみんなと少し違う人でも、できる仕事はどんなものがあるかな?
- 話す言葉が違う人でも、一緒に働くことができるかな? どうすれば分かり合えるかな?
- 将来、どんな仕事をしてみたいですか? その仕事は、社会のどんなところで役に立つと思いますか?
- 働くって、何のためにするんだと思いますか? お金のため? それとも、誰かのため? 自分のため?
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アクティビティ案:
- 「わたしのなりたいものマップ」作成: 画用紙の中央に自分の絵を描き、そこから矢印を伸ばして将来なりたい職業、その仕事に就くために必要なこと、その仕事でどんな人の役に立ちたいかなどを絵や言葉で書き出す。
- 「しごと図鑑」づくり: グループごとにテーマ(例: 食べ物に関する仕事、乗り物に関する仕事、地球を守る仕事、世界の珍しい仕事など)を決めて、図書館やインターネットで調べ学習を行い、発表会形式で共有する。
- 「もしも〇〇がなかったら」ロールプレイング: 特定の仕事(例: パン屋さん、電気屋さん、ゴミを回収する人など)がなくなってしまった世界を想定し、困ったことや代わりにできることを話し合い、短い劇や発表にまとめる。
- 働く人に聞いてみよう: 保護者や地域の方に学校に来てもらい、仕事について話を聞く機会を設ける。なぜその仕事を選んだのか、どんなやりがいがあるのか、どんな人が働いているのかなどを質問する。
- 未来の仕事を想像しよう: 10年後、50年後の未来にどんな仕事が生まれているか、子どもたちに自由に想像させて絵や文章で表現する。
まとめ
「働くことの多様性」を学ぶことは、子どもたちが社会の仕組みを理解し、多様な人々がそれぞれの役割を果たすことで社会が成り立っていることを知る貴重な機会となります。様々な仕事に触れることは、自身の可能性に気づき、将来への希望を育むキャリア教育の第一歩であると同時に、自分とは異なる立場や背景を持つ人々への想像力を養い、多様性を尊重する心を育む道徳教育や平和学習にもつながります。
子どもたちの純粋な興味や疑問を大切にしながら、「働くこと」という身近なテーマを通して、世界には多様な人々がいて、それぞれが大切な役割を担っているということを伝えていくことが、未来の共生社会を築く上で大切な一歩となるでしょう。ぜひ、この記事で紹介したアイデアを参考に、子どもたちが目を輝かせて多様な「働くこと」や社会とのつながりについて学ぶ時間をつくってみてください。