子どもと学ぶ世界の多様性

「かっこいい」や「かわいい」は一つじゃない~見た目の多様性から学ぶ尊重~

Tags: 多様性, 共生, 価値観, 見た目, 自己肯定感, 教育

はじめに:身近な「かっこいい」「かわいい」から多様性へ

子どもたちが日々の生活の中でよく使う言葉に、「かっこいい」「かわいい」があります。友だちの持ち物、テレビのキャラクター、洋服、そしてお互いの見た目に対して、子どもたちは自然にこれらの言葉で感じたことを表現します。しかし、「かっこいい」や「かわいい」の基準は、一人ひとり違います。ある子が「かっこいい」と思うものでも、他の子はそう思わないかもしれません。

この、身近な価値観の「ちがい」は、世界に存在する多様性の入り口となるテーマです。特に見た目の多様性に関しては、外見に対する無用なからかいや、特定の見た目を理想とするあまりに自分自身や他人を受け入れられないといった、子どもたちの心に関わる問題に繋がりやすい側面も持ち合わせています。

この記事では、「かっこいい」「かわいい」といった身近な価値観の多様性に着目し、それが世界の多様性、そして互いを尊重し共に生きる平和な社会とどう繋がるのかを考察します。小学校教諭の皆様が、このテーマを授業で扱い、子どもたちが自分や他者の見た目の多様性を受け入れ、尊重する心を育むためのヒントを提供いたします。

テーマの解説:「かっこいい」「かわいい」にみる価値観の多様性

「かっこいい」や「かわいい」といった感覚は、非常に個人的なものです。育った環境、文化、その子自身の経験によって形成されます。例えば、ある文化では伝統的な民族衣装が最も美しいとされ、別の文化ではモダンなファッションが魅力的とされるかもしれません。また、同じ文化の中でも、流行によって「かっこいい」「かわいい」とされるスタイルは常に変化します。

さらに重要なのは、「かっこよさ」や「かわいさ」が外見だけに限りらないということです。困難なことに立ち向かう勇気ある姿を「かっこいい」と感じたり、困っている人に優しく寄り添う様子を「かわいい」と感じたりすることもあるでしょう。内面の優しさ、強さ、誠実さ、努力する姿勢なども、人によっては外見以上に魅力を感じる対象となります。

子どもたちは、メディアや周囲の大人、友だちからの影響を受けながら、自分自身の「かっこいい」「かわいい」という価値観を形成していきます。その過程で、自分自身の見た目に自信が持てなくなったり、特定の外見を持つ友だちをからかってしまったりするような問題に直面することもあります。

子どもの視点からの深掘り:感じ方、考え方、そして心

子どもたちの目には、「かっこいい」「かわいい」という言葉は、純粋な賞賛や好意の表現として映ります。一方で、自分自身が「かっこよくない」「かわいくない」と感じたり、周りの友だちが自分とは違うものを「かっこいい」「かわいい」と言っているのを聞いて戸惑ったりすることもあるでしょう。

子どもたちはしばしば、多数派の意見や流行に強く影響されます。「みんなが〇〇をかっこいいと言っているから、自分もそう言わなきゃ」「△△ちゃんみたいにかわいくなりたいけど、なれないからいやだな」といった感情を持つことがあります。自分の感じ方を素直に表現できなかったり、外見の「ちがい」をからかいの対象にしてしまったりする可能性があります。

また、生まれ持った肌の色や髪の色、体つき、あるいは障がいなど、自分で変えられない見た目の特徴について、なぜ自分は他の子と違うのだろう、これでいいのだろうかと疑問や不安を感じることもあります。こうした子どもたちの素朴な疑問や感情に寄り添うことが大切です。大人の複雑な価値観や社会問題に直結させるのではなく、まずは「ちがい」があること、そしてその「ちがい」をどのように感じるかという、子ども自身の内面に焦点を当てていくことが有効です。

教育現場での活用アイデア

このテーマを小学校の授業で扱うことは、多様な価値観の存在を知り、互いのちがいを尊重する心を育む上で非常に有益です。道徳科、総合的な学習の時間、特別活動などで取り入れることができるでしょう。

以下に、授業で活用できる具体的なアイデアをいくつか提案します。

問いかけ例(オープンクエスチョンを中心に)

アクティビティ案

これらの活動を通して、子どもたちが自分自身の見た目の多様性を受け入れ、自己肯定感を育むとともに、他者の見た目や価値観の多様性を認め、尊重することの重要性を学ぶことができます。

まとめ:多様な「かっこいい」「かわいい」を認め合う社会へ

「かっこいい」「かわいい」という身近なテーマから始まった探求は、見た目の多様性、価値観の多様性、そして人間の多様性へと繋がります。一人ひとりが異なる外見を持ち、異なる感じ方や考え方を持っていること。そして、その「ちがい」こそが、世界を豊かで面白い場所にしているということに、子どもたちが気づくきっかけとなるでしょう。

他者の多様性を受け入れ、尊重する心は、自分自身の多様性を受け入れ、大切にすることにも繋がります。見た目や特定の基準だけで人を判断しないこと、そして自分自身のユニークさを肯定することは、子どもたちが健やかに成長し、他者と共に生きる上で非常に重要な基盤となります。

この学習が、子どもたちが多様な人々がお互いを尊重し、安心して自分らしくいられる平和な社会を築くための、小さな、しかし確実な一歩となることを願っています。